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2024年10月2日水曜日

クラブの練習日数について

一部の保護者の方の中に練習日数を増やしたいという思いがあるようです。
保護者としては、自分のお子さんに速くなってほしいと願うのは当然であり、練習量を増やせばもっと速くなるのではないかと思われるのは仕方ないかも知れません。
しかし、陸上競技というスポーツに関していえば、その常識は通用しません。確かに練習量を増やしたり専門的な技術を会得すれば一時的に速くはなるかも知れませんが、それは将来のピーク記録を下げることに繋がりかねません。

日本陸上競技連盟のレポートでも、小学校時代の陸上競技経験は生涯ベスト記録に影響を与えないと過去の統計から結論付けています。
実はオリンピックや世界選手権の代表選手を見てみても多くは小学校時代に専門的な陸上クラブには属しておらず、中学校でも全国レベルの大会に出場した選手はそれほど多くありません。

では小学生の陸上クラブは何のために存在するのか。それは「普及のため」これに尽きます。この年代から陸上を普及させる活動を始めておかないと、中学や高校から陸上に取り組む人が大きく減少するのは間違いないからです。それでは本当に陸上競技に本格的に取り組み始めてほしい高校年代には繋がりません。

全国的にも多くの強豪陸上クラブチームの小学生の練習は週2回程度です。このぐらいが適正であり、その範囲の中でお互いに勝ったり負けたりするのであれば問題ないのですが、勝つために練習時間を増やすのはちょっと違います。
うちのクラブの週2回+教室という体制もそうやって確立してきました。

実は世界的にも高校を含めたジュニア期の練習量の多さは日本特有と言われています。なので、世界レベルのユース・ジュニア大会で日本人が活躍することがあっても、その上の年代ではなかなか勝てないとも言われています。

どうしても日数を増やしたいのなら、一見関連のない他のスポーツを並行して行うことを勧めます。様々な運動経験は陸上競技にも役立ちますし、もしかしたら別のスポーツで才能の花が開くかも知れません。それが本人のためなら陸上界に囲い込むつもりもありません。
また、ジュニア期からずっと陸上競技を続けている選手でも一流選手は、種目を変えて活躍しているケースが多いということも忘れてはなりません。同じ種目に固執すると練習もパターン化され、怪我のリスクも大きくなります。クラブや教室ではできるだけ多くの種目を経験させ、練習では動きづくりを中心に据え、遊びやゲームも採り入れながら、動きの引き出しを増やすことを心がけています。

大会に関しても、意図的に出場数を減らし、あえて記録を生むチャンスを少なくするほうがいいのかなと最近考え始めています。多くの大会に出れば当然ながら記録は出るチャンスは増えるからです。レベルの高い記録を出せば出すほど、それ以上記録を高める難易度は高くなります。そのことはモチベーションの低下にも繋がってきます。
記録会に出たりするときは、あえて本命種目は封印し、様々な種目にチャレンジすることも良いと思います。

ジュニア指導者の多くはこういった陸上界の常識を分かってはいても、目の前に才能あふれるアスリートが現れると、やはり自分の力で強くしてやりたいと意識が芽生えます。しかしそれは単なる自己満足に過ぎず、そのような意識は勇気を持って捨てなければ、本人のためにもならないことを改めて肝に命じなければなりません。

こういった傾向は中学生においても変わりません。小学生よりは練習量を増やすにしても、集中して練習できるのなら週3~4回で十分かと思います。アスリートとしての完成形は高校以上で作っていけばいいのです。

今が良ければいいのではなく、将来大きく花開くために子どもたちを見守り、心と体をじっくり育てていきましょう。